可能性はまだある
「八日町の前を通る道は、昔と比べて人は歩いてないし車は多い」
「お客さんが車を停めておける駐車場がないから、人もお店に入らなくなるよね」
一見ネガティブなことを言っているように思うけど、小松さんの話はいつもその続きがある。
「今の市役所第二庁舎(昔の気仙沼女子高)はすごく良くできた木造校舎で、
今後もし市役所が第二庁舎部分を建て替えたり、別の場所に移す時に壊してしまうのはもったいない。第二庁舎の裏にBRT大船渡線が走っているけど、あの場所に駅を作って第二庁舎の二階へそのまま入れるような建物にしたら、八日町へもBRTから直接アクセスできてもっと人が来る場所になると思うよ。」
八日町は「山の町」
「気仙沼は『海の町』というイメージをみんな持っているけど、海があって町、そのすぐ後ろには山が並んでいる。
火除神社や愛宕神社の裏には山の中を歩ける道があって、それが他の街区へと繋がっていたりする。
青龍寺の上も登っていくと気仙沼小学校があるしね。
そういう道が震災の時も避難路になっていたりしたんだよ。」
「話はちょっとずれるけど、島根県にも『火除神社』という名前の神社があって。歌人の柿本人麻呂を祀った神社なんだけど、『火気の元(かきのもと)火止まる(ひとまる)』『人生まれる』という語呂合わせで柿本人麻呂が出てくるらしいんだよ。そういう史実を絡めたストーリーが町の中にあるというのはいいよね。八日町にもそういう場所がもっとあるといいなあ。歌人グループとかね、作るといいよね。」
「『山を抜けて町を巡る』そんな探検も町を使ってできると思うよ。」
今の暮らしの楽しさ
小松家具店に行くと、いつも2階の打ち合わせスペースで小松さんが豆を挽いてコーヒーを入れてくれる。
「豆は喫茶店に卸している豆屋さんの豆を分けてもらってるんだ。」
「何が楽しいかって聞かれたら、こうやってお客さんとコーヒーを一緒に飲むのは楽しいっちゃ楽しいよねえ」
コーヒーと一緒に出てくるチョコレートもおいしい。
仕事の打ち合わせで来た時もついつい話し込んでしまう、なんてことも少なくない。
もっと新しいお店や人が増えて欲しい
「2011年の震災があって、お店は一気に減ってしまったけどそれから5年経ってやっと八日町236ができてそこにお店が入った。それは大きな一歩だと思う。新しく飲食店を始めるというのはなかなか難しいことだと思う、利益を上げなきゃいけないからね。でも、住んでいる人にとってはもっと色んなお店があるといいなと思うよ。今は市役所や郵便局、銀行もあって便利なことは便利だけど、生活はそれだけじゃ完結しないからね。」
小松さんのオフィスには、趣味のレコードプレーヤーや将棋盤、小松さん作(!)の屏風・掛軸もある。
「仕事に出かけている時は相手できないけどね、いる時は上でコーヒーでも飲んでったらいいんだよ。」
話を聞いていると、人の生活というのは仕事だけではなくて、身近な人のことや町のことを考えながら暮らしていくことそのものなんだなと思わされた。
小松さんはいつも忙しそうに仕事をしているが、自分の好きなことも大切にしている。訪ねて来てくれた人と、一緒にコーヒーを飲んだりレコードを聴いたり。
生活のすべてが地続きのようで、なんだか羨ましく思う。自分でお店を持つというのは単なる職業の選択とは少し違うようだ。
商店名 | 小松家具店 |
業種 | 家具販売、家具や内装の設計・相談 |
店主 | 小松武美さん |
営業時間 | 9:00-18:00(不定休) |
住所 | 気仙沼市八日町2-3-8 |
電話番号 | 0026-22-0901 |