[インタビュー]横田屋本店

八日町に本社を構える『横田屋本店』さんは、今のご主人猪狩儀一さんで12代目となる海苔と海産物の老舗です。元は福島出身で岩手に移り、時代時代に合わせて商売の形を変え、気仙沼で海苔の養殖をはじめたのが安政四年。その伝統の味には日本各地にファンがおり、観光などで気仙沼に来てはお土産として買う方だけでなく、通販などでも日々注文を受け付けています。

「口コミから始まり、何十年のお付き合いの方も多いですね。昔から地方発送はしていましたが、代が変わってもずっと続いてくれるお客様も多いです。」

今回、お話を聞かせてくれた奥さんの猪狩久仁(くに)さんが、そう教えてくれました。


八日町は馴染むきっかけになるイベントがすごく多い

久仁さんが、生まれ故郷の塩竈(しおがま)から八日町に嫁いで来たのは30年前。当時知り合いはいませんでしたが、八日町にはすごく溶け込みやすかったといいます。そのきっかけとなったのは、とにかく多彩な行事の数々。

「市民運動会の練習や、港まつりの打ち囃子の練習とかを2週間〜1ヶ月くらい前からして、私はそういう経験が無かったんですけど、『出てきてくださいね』ってみなさんから声がかかって。そういう意味ではすごく入りやすい。馴染むきっかけになるイベントがすごく多かったですね。」

八日町に嫁いできた奥さま方が地域に“ハマる”きっかけとして、口を揃えて話してくれるのが数多い行事やイベントについて。それはけして強制的なものではなく、極自然に馴染めるような空気ができているといいます。

「特に印象的だったのは火除神社のお祭り。大きい神社でのお祭りというのは塩竈にもあったんですけど、地域の氏神様っていうのは馴染みがなかった。すごく地域性っていうのは感じましたね。」

 


あえて「地域のものを選ぼう」と思わなくてはならない寂しさ

横田屋本店の名物はもちろん海苔。お土産や贈り物として好評です。

久仁さんが来た頃の八日町は賑わいがあっただけでなく、お魚やお肉など全てにおいて専門的なお店があり、何もかも事足りる町だったと語ります。今は車で遠くへ買い出しに行くようになったのが不便なだけでなく、敢えて『その土地のものを買おう』と思わなければならなくなったことが寂しいとのこと。

「昔は日々の買い物の中で、歩きながら覗きながらできるのが良かったです。やはり顔が見える関係性があって、選ぶ際に直接話してアドバイス頂けたりするというのは大きいですよね。」

震災が契機なだけでなく、その前から少しずつ変わっていった八日町商店街の風景について久仁さんに望むことを聞くと、色んな人が自由に入って覗ける店舗が増えること、そしてお店に限らず、人が集まる場所ができることだと話してくれました。

「うちの会社の方たちは八日町ブランチ(復興公営住宅『八日町236』の1階にあるレストラン)の常連さんになってて、週に2回も行ってるみたい(笑)ああいうお店が一軒あるだけでも違いますよね。」

 


これからもとにかく丁寧に

また久仁さんは、『横田屋本店』でのお仕事の他に『気仙沼つばき会』にも参加し、活動しています。気仙沼の様々な店舗の女将さんたちで構成される『気仙沼つばき会』は、漁師さんを送る“出船送り”から始まり、『気仙沼漁師カレンダー』の制作や、そのプロモーションイベントなど、漁師さんの活動を盛り上げるための活発な活動が有名です。

「震災で色んなものがなくなったり、忘れ去られたりしたけれど、あえて震災を売りにしなくても気仙沼にはいいものがあるっていうのを発信したいなって。気仙沼って食べ物であったり、自然であったり、震災抜きにしても絶対おもしろいところだと思うので、そういうことを発信できればというところですね。」

活動に向ける想いについてそう語ってくれた久仁さんに今後やりたいことについてもお伺いしました。

「地元の食材をやっぱり丁寧に作って発信していきたいなと思いますね。昔からある商品を丁寧に作っていて、みなさんに喜んで『横田屋のものを贈りたい』って思ってもらえるような丁寧な商売をこれからもしていきたいと思います。」

 

(文・猫田耳子)


商店名 横田屋本店
業種 海苔、海産物、食品製造・卸売及び小売
店主 猪狩儀一さん
話し手 猪狩久仁さん
創業年 安政四年(気仙沼では約300年前に開業)
営業時間 9:00-17:30(日曜定休 ※但し8月と12月は営業)
住所 八日町1-4-8
電話番号 0226-22-0175
WEB 横田屋本店
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