[インタビュー]グループホーム村伝

旅館からグループホームへ

グループホーム村伝が八日町にできたのは2004年のとき。

「この辺でいうと、新しい部類なんでしょうね。」

と代表の村上浩之さんは笑い、話し始めてくれました。

 

グループホーム村伝としてはまだまだ(八日町商店街内では)新しいですが、“村伝”としては他の商店同様、100年以上の歴史があります。村上さんのおじいさんの義理のお父さん、村上伝助さんが行商の人が泊まることの多かった気仙沼に旅館をはじめたことから、“村上伝助”略して“村伝”として歴史はスタートしました。1995年に一旦旅館としての営業はストップしまうのですが、その9年後、これもなにかの縁なのでしょう。子孫である浩之さんが同じ場所で、同じくたくさんの人が集まり、関わるサービスを始めることになります。

 

「サービスの対象がお年寄りなんで、よくある『ハートケア』とか名前を色々考えてたんですけど、この地域に昔から親しまれている、この名前をそのまま使えばいいじゃないかとなって。」

 


「ひろちゃんが帰ってきた」

グループホーム村伝のロビーには村伝旅館当時の看板が飾られています

村上さんが八日町にいたのは高校生のときまで。大学進学で気仙沼を出て、そのまま東京の会社に長い間勤めました。戻るきっかけとなったのは、同じく気仙沼出身の友人からこの事業立ち上げの誘いを受けたことから。すっかりホームタウンとなった東京を離れ、地元へ戻ることはやはりとても悩み、迷ったそうです。

「話を受けて、父親にも相談しまして。なるほど、これはとても必要だし、今後求められる事業だろうと。遅まきながら、親への恩返し的に考えるのも悪くはないなと。自分の親にも、地域の役にも立つだろうから、知って損はないだろうとあざとい考えでもあります(笑)」

帰ってきて良かったのか、自問自答の期間が長いこと続いたそうですが、それでも帰ってきて得たものの方が多いとしみじみ振り返ってくれました。

「この界隈では『ひろちゃんが帰ってきた』と言われたのは嬉しかったというのはありますね。帰ってきて人間らしさを取り戻したっていうのもあります。」

浩之さんが八日町にいた頃は、町内で野球チームが作れるほどいた同級生は、十年ぶりに帰ってきたときには全くいなくなり、“浦島太郎状態”だったそう。

「地元で仲間を増やすは大事だろうと、青年会に入ったりして。大変でしたけどみなとまつりの運営側をやらせてもらって。これって意外とやってみると楽しいし、大変だけどやる側に立たないと本当の面白さもわからない。」

「地元とのつながりや、所帯を持ってやっとマビトになったかなと。田舎に返ってくることで日本の田舎と東京についても引いて見えてきたり。帰ってきて見えることもありますね。」

 


グループホームが八日町にあること

インタビュー当日はクリスマス直前だったため、ホーム内には様々な飾り付けがなされており、共有空間には作りかけのクリスマスツリーも!

それまでの介護施設は、人里離れたところに作られるのが一般的でした。八日町も元々は市の中心地で、現在も車通りが普通にある地域。そんなところに介護施設を新たに作るのは…という考えも当時はありましたが、今となっては、そういった“普通の日常”が見られるからこそ、入居を申し込まれる方が多いそうです。また、町中にあるからこそ良い点についても教えてくれました。

「オープンして半年も経たないうち、夜中に近所で火災が発生しまして。小規模な施設は夜中に職員を一人しか置けないんですよ。その一人が避難誘導してた時に、近くのみなさんに助けていただいて。わたしが連絡を受けて車で駆けつけたときには、もう避難が終わっていたという。」

町の利点はトラブル時だけには限りません。浩之さんが小さい頃からお世話になっている、なりさわ酒店には入居者のみなさんのお散歩も兼ねてお買い物に行ったり、森田医院さんには駐車場で開かれるバーベキューに参加させてもらったりと、地域の方々との交流は多々あるそうです。

「そうなると自ずと、近隣の方々に協力ばかり求めてもアレですから、協力できるところは協力しようと。でも助けられてることの方が圧倒的に多いですね。」

 


八日町的“地域包括ケアシステム”

八日町に限らず、日本全国で進んでいる高齢化問題。そこで重要となるキーワードは“地域包括ケアシステム”。要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう支援される仕組みのことをいいますが、地域内で互いに力を携え合うこともその一端だと語ってくれました。

「力を貸していただきながら、場合によってはこちらも支えさせてもらいながら。そういう面で我々の方では何ができるか、というのを考えながら模索しているところですね。キレイごとじゃなくて、現実支え合いじゃないとやっていけないだろうなと思っていますので。ここも商店ではないですけど、町の一員としての役割を担っていくというのが大事なのかなと。」

災害公営住宅『八日町236』にも“多世代機能型交流拠点”として、子どもからお年寄りまで、障害があってもなくても安心して交流し、暮らしていけるようにというコンセプトがありますが、グループホーム村伝の村上さんと協働して、より一層高齢者にとっても暮らしやすい八日町のあり方も期待されますね。

 

(文・猫田耳子)


商店名 グループホーム村伝
業種 介護事業
店主 村上浩之さん
創業年 2004年
住所 八日町2-3-5
電話番号 0226-25-9802(村伝本部)
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