重いガラスの扉をドキドキしながら手で押し開けると、店の奥から「いらっしゃいませ」の明るい声。八日町で唯一の鞄と帽子を扱うお店『タカヤ』さんを訪ねました。
楽しみながら選べるようなお店でありたい
声の主は高橋可代さん。お父さんが始め、56年になる『タカヤ』を継いだ二代目店長さんです。明るくてパワフルなのに、やわらかく朗らかなその雰囲気にわたしたちはすぐに虜に。僅か1時間程度の間にも、来店されたお客様に気さくに話かけ、適切に望むものをオススメする高橋さんの様子を拝見しながら、どのお客さんもこの会話を楽しみに来ていることが伺えました。高橋さんにもそう話を振ってみると
「接客はね、楽しいのよ〜」
とニコリ。つられてわたしたちもニッコリ。
時代の移り変わりとともに、大型量販店が増えるだけでなく、ネットのワンクリックで買うことができたりと、購買活動の変化に大きく影響を受けてきた服飾類。それでもタカヤさんはお客さんから度々「このお店はなくならないでね」と声をかけられるそうです。
「お買い物に来て、楽しみながらものを選べるようなお店であってねと言われます。」
所狭しと並ぶ鞄・帽子・財布・手袋は、よく聞くブランド物から気軽に手に取れるものまで。高橋さん自ら、主に東京まで買い付けに行くセレクトは、どんな人のどんな場面にも沿うことができるよう選ばれています。これまでのように、ただ陳列しているだけではモノが売れない時代。それでも個店が必要とされている意味が、タカヤさんには潜んでいるのかもしれません。
見て回れる商店街に
高橋さんは店内でのコミュニケーションだけでなく、2011年の震災直後から“営業再開のおしらせ”をきっかけに始めたブログも毎週更新しています。「どう書いたらいいのかわからない!」と悩みながらも、いつもお店でやっていることそのままに、そこにいる人に直接話しかけるように書くことを心掛けているのだとか。
「やっぱり、新規のお客さんに『入りづらい』ってよく言われるの。『高いんじゃないのかしらね、安いものないんじゃないのかしらね』って。」
ネットを活用し、ブログを頻繁に覗く若い人にも気軽に入ってこられるようなお店づくりができればと、様々な努力をしています。正面を全面ガラス張りにして、お店の様子が外からも見えやすいように。シャッターはつけず、いつでもお店の中をこっそりと覗けるように…。
「買うつもりがなくてもウィンドーを見て、ふらっと入れるお店でありたい。そして一店舗でも多く商店が並び、(八日町から南町や魚町が)ぶらぶらと見て回れる商店街になったら、皆さんに喜ばれると思います。コンパクトシティーとして、お年寄りがお散歩コースになるような街なら理想です。」
ヨソでも買えるかもしれないし、ネットでも入手出来たかもしれないけど
お客様が楽しくお買い物できるように、あんなことこんなことの工夫を重ねる高橋さんの生活はいつもお店と共にあります。インタビューの最後に「個人的に今後やりたいことや夢などありますか?」と聞いても、出てくるのはお店の話ばかりでした。
「その商品はヨソでも買えるかもしれないし、ネットでも入手出来たかもしれないけど、うちにわざわざ来て、買って頂き、それを気に入って使ってくださるのはありがたいですね。」
高橋さんが発したこの“ヨソでも買える”という言葉にちょっとドキッとしてしまいました。交通網の発達、ネットインフラの進歩、最早世界中の何処に行っても、“そこでしか買えないもの”は殆ど残っていないように思います。モノが溢れてる時代、何故それを“選びだしたか”を大切にする高橋さんの想いが、その商品に込められているような気がしたのでした。
「わくわくするというか、来てちょっと楽しいとか。そういうお店であればいいかなと思います。」
(文・猫田耳子)
商店名 | タカヤ |
業種 | 鞄・帽子 |
店主 | 高橋可代さん |
創業年 | 1960年(八日町での開店は1992年) |
営業時間 | 9:00-18:00(水曜定休) |
住所 | 八日町1-1-6 |
電話番号 | 0226-22-2615 |
WEB | Takaya Bag |