八日町に帰ってきて一年、
八日町商店街ホームページ制作ワークショップ の第二回目から姿を見せてくれたのが時計宝石のコマツの若主人、小松康宣さん。
話を聞くと、八日町には1年前に拠点を戻したばかりといいます。
「21歳で東京に出て以来20年、ずっと向こうで働いていたので、僕自身、八日町のことをよく知らないんです。だから、このホームページ制作をきっかけに知りたかったんですよ。」
毎回のワークショップにも積極的に参加してくれる理由をそう語ってくれました。
八日町での暮らしは高校卒業をきっかけに仙台に出て以来。小松さんの記憶に残る八日町にはいつも賑わいがあったとか。
「印象的だったのは鯛焼き屋さんやラーメン屋さん、ずら~っと隙間なく商店が並んでいました。2-3年に1度帰省するたびに少しずつ店が減り、寂しくなってきましたね。」
はじめての商売
時計宝石のコマツは118年の歴史ある時計屋さん。
話を聞かせてくれた小松さんのお父さんのお父さん、そのまたお父さんが修理業務からはじめたそうです。しかし、小松さん自身はずっと会社勤めだったため、商売はまったくのはじめて。
「今は親父から色々勉強しています。壊れた時計を修理してみたり…父は修理できますが、ぼくはまだまだ簡単なことしかできない。」
資格はとりたいけど、道のりは厳しい。これからの野望というか目標にしてます、と小松さんは笑ってくれました。
御年47歳でそれまでやってきたことに一度蓋をして、新たな道を歩み始める。その覚悟を聞いているこちらの身が引き締まると同時に、いつまでも学ぶことがあるというのは素敵なことだな、とも感じました。
時計の修理はそこそこに値が張るため、ここ最近は「修理よりも買い換える方が安い」と新しいものに乗り換える方が多いそう。
「誰かから頂いたとか、よほど思い入れのあるものじゃないと修理してまで使う方はいないですよね。」
話を聞きながら修理を重ねて使い続けられる時計の姿を想像したとき、その風貌がふと八日町の景色に被るような気がしました。
20年ぶりの町に思うこと
そう尋ねて真っ先に小松さんが伝えてくれたのは、八日町全体の雰囲気について。
「まず物理的に暗いので、夜道を照らす明かりが欲しいです。夏に実験的に行われた あかりプロジェクト みたいな。レトロ調の明かりをずら~っとつけたら良いなと思いますよ。」
まだまだ八日町で本施行するには課題がありますが、以前行われたあかりプロジェクトによって醸し出された夏の夜の八日町の雰囲気は、町の方々には概ね好評だったようです。
「あとは昔みたいになってほしいなっていうのはやっぱりありますね。難しいことは分かってますけど、多少なりともね。何より僕らが住んでて楽しい町だったら、外から来ても楽しいと思うんですよね。」
住んでる人にとって楽しい町であることが大前提。外を向く前にまず自分たちの土台作りから。小松さんの目は遠い先を見ながらも、近くに目を配らせることも忘れません。
「そのあとはもちろん内向きにならないで、ちゃんと「商店街」にしたいですね。八日町商店街には古いお店もたくさんあるので、月立屋米屋さんとか。店としての佇まいも魅力的だしそのあたりがウリにならないかな。」
これから作っていく
気仙沼と聞くとき、どうやっても記憶から消せないのは2011年の震災と津波の話。その事実を受け止めながらも、数年後、数十年後に向けて小松さんは話してくれました。
「今はね、町として結構壊れた状態だから、ぶっちゃけると。だから今作ってる段階なんですよ。これからまた作っていこうよって。僕らがジジイになったときに、今回のホームページ制作委員会でやってきたような、町についての話し合いを続けてみんなでできてると良いですよね。」
「これからじゃないですか?これからです。これから作っていく。」
町づくりはいつも“これから”
時代の流れと共に町が商店街がどう変わっていくかはまだまだ分かりませんが、それでもいつも“これから”はじめることが大事なんだよ、という小松さんの強い意思を感じたのでした。
(文・猫田耳子)
商店名 | 時計宝石のコマツ |
業種 | 時計・宝石 |
店主 | 小松康宣さん |
創業年 | 1898年 |
営業時間 | 9:00-18:00(土日定休) |
住所 | 八日町2-2-10 |
電話番号 | 0226-22-5009 |
WEB | 時計宝石のコマツ |